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「使いこなせない層」が業務支障に — 管理職1,008名調査から読む、企業内AIスキル格差と投資意向

生成AI導入企業の管理職1,008名を対象にしたコーレ調査では、71.3%が使いこなせない人による業務支障に肯定し、別設問では86.5%が今後のAI投資予算増額に肯定しました。2つの回答者の重なりは未公表です。調査の限界を踏まえ、管理職教育・採用要件・評価制度へつなぐ判断軸を整理します。

分析
岡崎 太
CTO / AIアーキテクト
公開日
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Key Findings

  • 生成AI導入企業の管理職・マネージャー1,008名の71.3%が、使いこなせない人による業務支障に肯定。ただし主観的な実感を問う設問であり、損失時間やエラー率の実測ではない
  • 使いこなせない層として挙げられた上位は、課長・リーダー職29.3%、経営層26.8%、一般職25.6%。複数階層に回答が分散している
  • 別設問では86.5%が今後のAI投資予算増額に肯定。71.3%とのクロス集計は非公表で、支障を感じた同じ人が増額を望んだとは断定できない

サマリ

生成AIを配布して終わらせず、管理職が学び、業務のレビュー基準を整え、チームへ展開する流れを示した日本語インフォグラフィック

生成AIを導入した企業の内側で、次の課題が見え始めています。コーレ株式会社が2026年1月に実施したインターネット調査では、業務に生成AIを導入している企業の管理職・マネージャー1,008名の71.3% が、「生成AIを使いこなせない人によって業務に支障が出ていると思うか」に肯定しました。内訳は「とてもそう思う」22.2%、「ややそう思う」49.1%です(コーレ調査)。

使いこなせない人を尋ねた別の設問では、上位が自部門の課長・リーダー職29.3%、経営層26.8%、自部門の一般職25.6% でした。回答は一つの階層に集中していませんが、承認やレビューを担う中間管理職が最多だった点は、導入後の運用を考えるうえで重要です。

さらに別設問では、86.5% が今後のAI投資予算を増やしたいとの問いに肯定しました。ただし、71.3%と86.5%は同じ標本に対する別設問の集計で、両方に肯定した回答者の割合は公表されていません。本レポートは「支障を感じた人ほど投資を増やしたい」とは結論づけず、生成AI導入企業に勤務する同じ管理職・マネージャー標本で、課題認識と投資意向が並存していることを出発点にします。

ツール追加の前に、学習と業務設計をつなぐ

調査結果を、自社の教育・運用へ読み替えるための3段階です。

  1. 分布を測る部署別の利用、レビュー滞留、差し戻しを把握します。
  2. 管理職が学ぶAI成果物の評価と、任せる範囲の設計を訓練します。
  3. チームへ展開する個人技を手順・基準・共有事例へ変換します。

AI予算を、ライセンスだけでなく学習・レビュー・展開の仕組みに配分します。

データの前提: 「導入済み企業の管理職」に聞いた調査

数字を読む前に、母集団を確認します。

項目 内容
調査主体 コーレ株式会社
調査方法 PRIZMAによるインターネット調査
調査期間 2026年1月28日〜29日
調査対象 業務に生成AIを導入している企業の管理職・マネージャー
調査人数 1,008名
所属企業の上場区分 プライム上場40.0%、未上場・非上場の中小企業20.5%、スタンダード上場15.9%ほか

未導入企業と非管理職は母集団に含まれません。したがって「日本企業の71.3%で支障が出ている」ではなく、導入済み企業の管理職回答者の71.3%が支障に肯定したと読む必要があります。また、回答者の40.0%がプライム上場企業に所属していますが、公開資料では企業規模別の抽出・補正方法が示されていません。日本企業全体に対する代表性は確認できません。

コーレの公式発表では、生成AI導入の専門プロジェクトチームについて「専門プロジェクトチームはない」が29.2%でした。残る回答をすべて同じ成熟度の「体制あり」とみなすことはできません。ただし、導入済み企業の管理職が対象である点で、導入前の意向調査とは性質が異なります。

データ: 71.3%が業務支障に肯定

使いこなせない人による業務支障への回答

導入済み企業の管理職・マネージャー1,008名による自己申告です。

  • とてもそう思う
    22.2%
  • ややそう思う
    49.1%
  • 肯定合計
    71.3%

肯定合計は上2項目の合算です。客観的な損失時間・エラー率の測定ではありません。出典: コーレ調査。

この設問は業務支障の実感を測ったものです。どの業務で何時間の損失が生じたか、エラーが何件増えたかまでは示しません。それでも、導入企業の管理職回答者に「使いこなせない人」が業務上の論点として認識されていることは読み取れます。

使いこなせない人を尋ねた設問の上位は次のとおりです。

使いこなせない人として挙げられた上位3階層

回答は課長・リーダー職、経営層、一般職に分散しています。

  • 自部門の課長・リーダー職
    29.3%
  • 経営層
    26.8%
  • 自部門の一般職
    25.6%

複数回答。上位3回答のみ。年代別の設問ではないため、世代差の証拠にはなりません。出典: コーレ調査。

上位3項目は3.7ポイントの範囲に収まります。特定階層だけの問題と断定するより、複数階層に学習課題があると捉えるのが安全です。そのうえで、課長・リーダー職は成果物のレビューや業務配分に関わるため、研修対象の優先順位を検討する材料になります。

データ: 活用は個人作業に寄り、阻害要因は組織側にもある

活用業務の上位は文書作成63.1%、情報収集・要約51.4%、アイデア出し・ブレインストーミング37.4%でした(複数回答)。導入目的は業務の時間短縮・効率化66.2%が最多です(複数回答、コーレ調査)。

生成AIを活用している業務領域の上位3項目

文書作成と情報収集・要約が中心です。

  • 文書作成
    63.1%
  • 情報収集・要約
    51.4%
  • アイデア出し・ブレインストーミング
    37.4%

複数回答。上位3回答のみ。業務プロセス全体の変革度や生産性効果を測る指標ではありません。出典: コーレ調査。

活用を阻む要因の上位は、セキュリティ面の懸念33.5%、具体的な活用アイデアの不足26.0%、情報システム部門の協力不足22.4%でした(複数回答)。性能や精度だけでなく、ルール・用途設計・部門連携が導入後の論点になっていることを示します。

データ: 86.5%の投資意向は、71.3%と別設問

導入評価と投資増額意向

同じ標本への別設問の肯定合計を並べています。

  • 生成AI導入はうまくいっている
    70.1%
  • 今後AIへの投資予算を増やしたい
    86.5%

設問間のクロス集計は非公表です。回答者個人の重なりや因果関係は示しません。出典: コーレ調査。

年間投資予算は100万〜500万円未満21.5%が最多で、500万〜1,000万円未満20.0%、10万〜100万円未満16.5%が続きました。予算の捻出元は新規予算枠30.1%が最多です。ただし、この集計だけでは「初期検証を終えた」「成果が出たから増額する」といった理由までは確定できません。

私たちは、70.1%の導入評価と86.5%の投資意向が並んでいることを、次の投資を何に配分するか問い直す材料と捉えます。活用アイデアや部門連携が阻害要因なら、追加ライセンスだけでなく、業務選定・レビュー基準・教育へ予算を振り向ける余地があります。

総務省白書: 個人利用の拡大と「学ぶ環境」

総務省「令和8年版 情報通信白書」の2025年度調査では、日本の個人の生成AI利用経験は全体で58.8%でした。この年度から15〜19歳が対象に加わったため、全体値を2024年度の26.7%と単純比較する際には対象年齢差への注意が必要です。20歳以上に揃えると2025年度は52.2%で、2024年度の26.7%を25.5ポイント上回ります。ただし、同一回答者を追跡した経年調査ではありません。

企業側では、生成AIによる業務変革について「組織的な取組はない」と回答した日本企業が約3割弱でした。また白書は、業務プロセスの見直しや生成AI活用検討に必要なスキル・ノウハウを学ぶ環境について、日本は米国・ドイツ・中国より低いと整理しています(総務省白書)。

コーレ調査と総務省調査は母集団も設問も異なるため、直接結合して因果を示すことはできません。ただし、個人利用が広がる一方、組織的な学習環境が相対的に弱いという白書の背景は、導入済み企業で見えるスキル課題を考える補助線になります。

この調査の限界

  • 母集団の限定: 導入済み企業の管理職・マネージャーのみで、未導入企業や非管理職を含みません
  • 標本構成: 回答者の所属企業はプライム上場40.0%です。企業規模別の抽出・補正方法は示されておらず、日本企業全体に対する代表性は確認できません
  • 主観指標: 71.3%は業務支障の実感であり、客観的な損失や生産性を測った値ではありません
  • 設問間の関係: 支障71.3%と投資意向86.5%の回答者の重なりは公表されていません
  • 公開範囲: 公式ページで主要な設問・集計は公開されていますが、回答者単位のクロス集計は確認できません
  • 配布形態: 詳細資料・集計データは、会社情報などを求める資料請求フォームを通じて提供されています。ただし発行元は調査目的を「リード獲得」と明記していません

岡崎の分析

この調査から確実にいえるのは、導入済み企業の管理職・マネージャー回答者の71.3%が、「生成AIを使いこなせない人によって業務に支障が出ていると思うか」に肯定したことです。社内の客観的なスキル差の有無や大きさを測った調査ではなく、誰が原因で、何時間損をしたかまでは分かりません。そこで自社では、印象論のまま研修を決めず、部署別の利用分布、AI成果物の差し戻し、レビュー滞留時間、共有された業務手順の数を測る必要があります。

課長・リーダー職が最多だった結果は、「管理職が遅れている」と責める材料ではありません。管理職には、生成する技能だけでなく、AI成果物の根拠を確認し、リスクに応じて権限を分け、チームの手順へ落とす役割があります。一般社員向けの操作研修をそのまま流用せず、レビューと業務設計の訓練を別に用意するべきだと私たちは考えます。

投資意向の高さも、「撤退できない」「成功している」「増額が正しい」といった結論を直接支えるものではありません。大切なのは予算の中身です。活用アイデアと部門連携が課題なら、ツール費、人材育成、業務棚卸し、評価・監視を同じ投資計画の中で比較してください。

提言 — どう付き合っていくか

  1. 教育投資: 管理職向けに、AI成果物のレビュー、根拠確認、権限判断、業務再設計を扱う枠を設ける
  2. 採用要件: 特定ツールの操作経験だけでなく、AIを使った業務手順と品質基準を説明できるかを見る
  3. 評価制度: 個人の利用回数ではなく、再利用できる手順・レビュー基準・共有事例への貢献を評価する
  4. 可視化: 部署別利用分布、差し戻し、レビュー滞留、AI経由の完了業務を月次で追い、教育投資の配分に使う

最初に着手するなら、課長・リーダー職が承認する業務を一つ選び、担当者と管理職が同じ成果物をAIで作成・レビューする短い演習から始めてください。ツールの配布と人の育成を別プロジェクトにせず、同じ業務指標で検証することが、社内のスキル差を運用可能な課題へ変える第一歩です。


本レポートは公開一次情報に基づく分析です。数値の対象・設問・限界は、末尾の出典から原資料をご確認ください。

出典・参照データ

本レポートの分析は以下の一次情報に基づいています。統計・数値の詳細は各出典をご確認ください。

  1. 2026年最新・企業の生成AIの利用実態
    コーレ株式会社

    公式調査発表。調査期間・対象・回答者数、業務支障71.3%、階層別回答、導入評価、投資意向、活用領域、阻害要因を引用

  2. 2026年最新・企業の生成AIの利用実態(調査レポート案内ページ)
    コーレ株式会社

    資料の配布条件と、会社情報などを入力する資料請求フォームを通じて調査資料・集計データを提供していることの確認に使用

  3. 令和8年版 情報通信白書(概要版)
    総務省

    個人の生成AI利用経験58.8%、20歳以上52.2%、前年調査との対象年齢差、企業の組織的取組と学習環境の4か国比較を引用